業務効率化で最初にやることは、ツール選びではない

効率化の話になると、よく出てくるのが「どのツールを入れればいいか」という質問だ。気持ちはよく分かる。自分も最初はツールを探すところから始めた。ただ、ツールから決めると、入れたのに使われない、という結果になりやすい。

打ち手には順番がある。自分は、業務効率化を考えるとき、基本的に4段の階段として整理している。下から順に、運用を変える、形を決める、自動化する、AIに任せる。新しいツールを入れる話が出てくるのは3段目から、AIは4段目で、どちらも後ろのほうにある。

ただし階段を上る前に、決めることがもう1つある。どの業務を対象にするか、だ。

どの業務から手を付けるかを先に決める

最初の候補を絞るなら、まずはこの2軸で考えるといい。

– 頻度。どれくらいの回数、繰り返し発生しているか

– 定型度。やることの中身が毎回どれくらい同じか

この2つが両方とも高い業務が、最初の候補になる。逆に、月に1回しか発生しない業務や、毎回中身が変わる判断業務は、最初の改善対象としては優先順位を下げてもいい。難しい業務から手を付けたくなるが、最初に成果を出しやすいのは、頻度が高く、やることがある程度決まっている業務のほうだ。

1段目は運用を変える

1段目は、今使っている紙やファイルはそのままで、残す中身と置き場所を変える段だ。抜けている情報を足す。書く場所を1箇所に決める。この段では、新しいツールを買わなくても改善できることが多い。

たとえば引き継ぎ。商談の内容は残っているのに、渡した資料、出した見積、貸し出したサンプルが記録として残っていない。自分が営業で見てきた範囲では、これは珍しくなかった。だから後任が同じことをお客様に聞き直す。引き継ぎシートに必要な欄を足すだけで、この聞き直しが減ることがある。

必要な情報が残るようになって、聞き直しがなくなったなら、1段目で止めていい。情報は残っているのに、どこに書いたか分からない、数が数えられない、が残るなら、2段目へ進む。

2段目は形を決める

1段目で足した欄も、自由記述のままだと後から使えない。たとえばサンプルの欄に「先週Aさんに渡した分、返却待ち」と書いてあっても、貸出中が今いくつあるかは数えられない。貸出日、品名、数量、状態のように項目を分け、状態は「貸出中」「返却済」から選ぶ形にすると、並べ替えられるし、比べられるし、抜けが見える。

1段目が「何を残すか」を決める段なら、2段目は「どう残すか」を決める段になる。ここは今使っている表計算ソフトやフォームの機能で足りることが多い。新しく何かを買う必要は、まだない。

ここまでで、後から追える状態になる。それでも同じ内容を別の表へ手で写しているなら、3段目へ進む。

3段目は自動化する

ここから、自動化の仕組みを検討する。手で写している、転記している、同じ数字を2箇所に入れている。こういう作業は自動化できることがある。同じ数字を2箇所に入れているなら、片方を参照にする。転記しているなら、フォームの回答をそのまま集計表へ流す。今使っているものの設定を変えるだけで済むこともある。

ただし、1段目と2段目を飛ばしてここへ来ると、決まっていない運用をそのまま自動化することになる。散らかった机をそのまま箱に詰めるのと同じで、あとで取り出せない。

転記が消えても、最後に人が全部読んでまとめ直しているなら、4段目へ進む。

4段目はAIに任せる

決まった形の文章にする、長いメモから要点を抜き出す、下書きを作る。この種の作業はAIが向いている。自分の場合は、記録や運用を整えてからAIを使うのを基本形にしている。前のほうで、毎回中身が変わる業務は最初の改善対象として優先順位を下げてもいいと書いた。前の段で記録や形が整っていると、こうした業務にもAIを使いやすくなる。最終的に何をするかを決める役割は、人に残す。

引き継ぎの例なら、項目に分けて溜まった商談メモを渡して、後任向けに経緯を3行にまとめてもらう、といった形になる。元の記録がそろっていなければ、まとめようがない。ここでも下の段が効いてくる。

AIに限らず、自動化全体で考えても同じだ。先日、新幹線の車内アナウンスが機械の音声になっていた。AIかどうかはともかく、内容がある程度決まっていて、繰り返し発生する。機械に任せやすい条件がそろっているように見えた。ただ、どのタイミングで何を流すかまで機械が決めているわけではないだろう、と思いながら聞いていた。決まった型の作業は機械に渡して、何をいつ出すかを決めるところは人が持つ。業務の自動化もこういう形になりやすい。

どの段でも、目的が達成できたなら、そこで止める。大事なのは、最上段まで行くことではない。

上の段ほど、考えることが増える

上の段へ進むほど、新しい仕組みの設計や設定、確認すべきことが増えやすい。同じ効果が得られるなら、できるだけ下の段で解決した方が、余計な仕組みを増やさずに済む。効果が出ないまま次の段へ上ると、決めごとと仕組みだけ増えて、元の困りごとは残ったままになる。

まず1つだけ選んでみる

今日からできることを1つ挙げるなら、この順で書き出してみてほしい。

1. 頻度が高く、やることが毎回ある程度決まっている業務を1つ書き出す

2. その業務で、繰り返し困っていることを1つ書き出す

3. まず「何を残すか」「どこに残すか」を変えるだけで、その困りごとが消えないかを考える

4. 消えないなら、残った困りごとを見る。「何を残すかの問題」なら1段目、「どう残すかの問題」なら2段目、「手で写している問題」なら3段目、「文章にする・要点を抜き出す問題」なら4段目にあたる

ここで困りごとが消えるなら、新しいツールを入れる必要はまだないかもしれない。消えない場合も、残った困りごとがどの段にあるのかが見えてくる。そこまで整理できると、次に何へ時間やお金をかけるのかも判断しやすくなる。

自社の業務がどの段にあるのか分からない、どこから手を付ければいいか決めにくい、という場合もあると思います。そういうときは、一緒に整理することもできます。

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