どの作業を自動化するかは、「できるか」ではなく「壊れたときどうなるか」で決める

業務の自動化を検討する際、「そもそもこの作業は自動化できるのか(技術的に可能か)」から入りがちです。しかし、「できるかどうか」を基準にすると、判断を見誤る危険性があります。

今はAIもツールも充実しており、自動化できる作業は山のようにあります。本当に重要なのは、「できる作業のうち、どれを優先して自動化すべきか」という見極めです。私はその判断基準を、「システムが壊れた(止まった・間違った)ときにどうなるか」に置いています。

目次

自動化のリスクと価値を3つの視点で測る

自動化した仕組みも、いつかは止まったり、間違えたりするものです。だからこそ、導入を決める前に「その日」のことを想定しておく必要があります。見るべきポイントは、1つの「価値」と2つの「リスク」です。

  • どれくらいの頻度で使うか(自動化による価値)
  • 間違ったとき、誰がどれくらい困るか(影響範囲というリスク)
  • 直すのに、どれくらい手間がかかるか(復旧コストというリスク)

使用頻度が高いほど自動化のメリットは大きくなりますが、同時に、エラーの影響が重く復旧に手間がかかる作業ほど、抱えるリスクも大きくなります。「価値」と「リスク」は切り離して評価し、両方が大きい作業については「取り組む価値は高いが、最も慎重かつ丁寧に設計すべきもの」として扱います。

最も危険なのは「エラーを出さずに間違う」こと

システムの不具合には大きく2種類あります。「エラーが出て止まるもの」と、「何も起きずに間違った結果を出し続けるもの」です。

実は、システムが止まる方が対処は容易です。誰かが異変に気づいて声が上がることが多く、後回しにしてもリカバリーしやすいからです。

本当に恐ろしいのは、後者の「黙って間違う」ケースです。画面上はいつも通りでエラーも出ないため、誰も異常を報告しません。問題が起きていること自体に気づけず、後日何かの拍子にまとめて確認した際に、初めて数字の大きなズレが発覚するのです。

さらに、自動化はこの「気づけないリスク」を増幅させる側面があります。人が手作業で行っていた頃は、「今日は件数が多いな」「この数字は少し不自然だな」と違和感を覚えるタイミングがありました。処理を機械に任せると、そうした「人の感覚によるチェック機能」ごと消滅してしまいます。速さと引き換えに、異常を察知する人がいなくなるのです。

あえて「自動化しない」という選択

「月に数回しか発生しない」「自分一人しか担当していない」「間違ってもすぐに手作業で修正できる」——このような条件が揃っている場合、自動化の価値は高いとはいえません。

それにもかかわらず無理に仕組みを作ろうとすると、構築の手間や、エラー時に原因を調べる時間のほうが、本来の作業時間を上回ってしまう本末転倒な事態を招くことがあります。私自身も、設定でつまずいた作業を結局手動で片付けた経験があります。「技術的には可能」でも、「その日は手で終わらせたほうが早い」ケースは確実に存在します。

自動化を進める際の判断ステップ

これらを踏まえ、私は以下の順番で自動化の是非を判断しています。

  1. その作業は、どれくらいの頻度で発生するか
  2. 間違ったとき、エラーで止まるか、それとも「黙って進む」か
  3. 黙って進む作業の場合、後から異常に気づける仕組み(アラートや目視の工程等)をセットで作れるか
  4. エラーが起きた際、誰が、どれくらいの手間で復旧できるか

もし「黙って進む作業」を自動化するのであれば、必ず「確認の仕組み」もワンセットで設計する必要があります。「処理件数だけは目視で突き合わせる」「月に一度だけ抜き打ちで確認する」といった小さな工夫で構いません。そうした安全網まで含めた設計が難しい場合は、あえて「手作業のまま残す」ほうがよい場合も多いと考えています。私はそこで明確に線を引いています。

なお、どの作業から手をつけるべきかの優先順位については、過去記事「クレームが来ない問題から先に潰す」にて、「困っているか」ではなく「気づけるか」の視点で解説しています。

どこまでを自動化し、どこに人の目を残すべきか。自社のリソースや業務特性に合わせた線引きは、Stepwise Partnersの無料相談(オンライン60分)で、現状の業務の流れを一緒にたどりながら整理できます。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

CAPTCHA


目次